新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が2022年11月11日に劇場公開されます。
それに先駆けて原作小説が発売されました。
「すずめの戸締まり」の物語はフィクションですが、「要石(かなめいし)」は実際に存在し見に行くことができます。
今回は、茨城県・千葉県・宮崎県に実在する要石についてご紹介します。
ミミズの正体や元になった神話、聖地についても考察します。
1、「すずめの戸締まり」の要石とは?ミミズの正体
「すずめの戸締まり」のストーリーはまとめるとこのような内容です。
主人公の高校2年生の岩戸鈴芽(すずめ)が、『閉じ師』をしている大学生の宗像草太と「後ろ戸」の戸締りをして日本を渡り歩く物語です。
「後ろ戸」とは死者の世界につながる扉で、そこには「ミミズ」という地震を起こす化け物が住んでいます。
後ろ戸から出てくるミミズが地震を起こさないように、すずめは後ろ戸の鍵を閉めていきます。
数百年に一度の大きな震災は、後ろ戸だけでは抑えられないので、要石がおかれています。
ここでいうミミズとは、地震・震災の元凶と考えられます。
物語の中で要石は「東京と宮崎」の2箇所とされています。
物語の鍵をにぎる要石ですが、実際に要石伝説は日本に存在していますのでご紹介します。
※新海誠監督がどの神話をモチーフにしたか語っていませんので考察した内容になります。
2、茨城県・鹿島神宮と千葉県・香取神宮の要石
地震を鎮める要石は、全国の神社にいくつも存在しているそうです。
最も有名なのが、茨城県の鹿島神宮の要石。
地震をおこすとされる、大鯰(ナマズ)の頭を要石で押さえている伝説が残っています。
地上に出ている要石は、直径30cm・高さ7cmほど。
地中には巨石が埋まっているという話です。
引用元:https://city.kashima.ibaraki.jp/site/bunkazai/50060.html
江戸時代に水戸藩主・徳川光圀が要石の周囲を7日7晩掘り起こしても、穴は翌朝には元に戻り、掘り起こせなかったとか。
鹿島神宮の要石は、千葉県・香取神宮の要石と対になっています。
伝説によると、鹿島神・武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)と、香取神・経津主大神(ふつぬしのおおかみ)が、地中に深く石棒を差し込み、大ナマズの頭尾を刺し通して地震を抑えているそうです。
「すずめの戸締り」では、ミミズの頭尾に剣をさす様子が伝説に似ていると考えました。
3、鎌倉時代に描かれた地震蟲
鹿島神宮の大ナマズ伝説は江戸時代に広まったもので、それ以前は「地震蟲(むし)」が地震を起こしていたという伝説もあります。
江戸時代に制作された歴史書、伊勢暦(いせこよみ)にその内容が書かれています。
地震を起こすのはナマズではなく、地震蟲。
【地震蟲とは】
・頭が東で尾が西を向いている
・脚は10本
・目には太陽と月を持つ
・日本列島を背に乗せるほどの大きさ
・鹿島大明神が要石でこの地震蟲を鎮めている
地震蟲の絵を見ると、なんだか「すずめの戸締まり」のミミズに似ているように感じました(あくまで個人的感想です)。
ナマズは大昔からこの地方にいたという記録はなく、ナマズが知られるようになったのは江戸時代になってからだと一説には言われています。
新海誠監督が何を元に物語を創られたかは公表されていませんが、このような伝説が元になっているかもと想像を膨らませるのもおもしろいですね。
4、宮崎県・高千穂神社の鎮石
物語の主人公・すずめは、九州に住んでいるとされています。
宮崎県の高千穂神社には、鎮石(しずめいし)が存在します。
看板によると、なんと鹿島神宮の要石はここが寄贈したものだと書かれています。
引用元:https://www.solid-earth.com/blog/2018/11/11/post-1678/
日本神話の始まりの地は高千穂なので、高千穂から鹿島神宮に贈った石なのでしょうか。
ちなみに鹿島神宮側の由来には、高千穂神社から贈られたものだという文書は見当たらなかったです。
また、石は同じ石を切り出したものではないようです。
忘れ去られた伝説…と考えるとロマンを感じますね。
5、まとめ
今回は、すずめの戸締まりの要石についてご紹介しました。
茨城県・鹿島神宮、千葉県・香取神宮、宮崎県・高千穂神社には要石と鎮石が存在します。
実在する要石は、「すずめの戸締まり」の要石の話と似ている点があり、物語でもしかしたら意識しているのではないかと想像しました。
新海誠監督のアニメ作品は、神話や伝説に触れていてとても面白いですね。
深読みして映画を見てみると、色々と発見があるかもしれません。